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日々の妄想を書き綴る
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ザアァ、と水が流れ出る音が耳に心地良かった。
コウタが、アリサが、サクヤが、笑い掛ける度に黒く粘ついたモノが身体の中を侵食して荒れ狂う。
中から掻き混ぜられる感覚は不快以外の何でも無くて、沙羅は自分の胸元に掌を当てる。
掻き毟ってしまいたい衝動に襲われながらも彼女は洗面台に備え付けられている鏡を見つめる。
濁った瞳に、表情の無い、醜い顔。
 
嗚呼、胸が痛い。
 
忘れた筈の感情が、捨てた筈の期待が、こうも自分を苦しめて仕方がない。
 
痛い、痛い。
 
物理的な痛みを殆ど感じなくなった所為か、やけに精神的にまいるのが早くなっている。
 
痛い、イタい、いたい…。
 
暴発しそうな感情が沙羅を蝕む。
彼女は拳を握ると、衝動のままに自らを映す鏡を叩き割った。
 
 
 
 
 
 
その音はベテラン区画の廊下を響き渡った。
派手に硝子が割れ、勢いよく何か硬質な物を床に叩き付ける様な音が数分続いた後、それはピタリと止み再び静寂に包まれる。
騒ぎを聞き付けたサクヤが部屋の扉を数度叩いてみるが応答が無かった為、心苦しく思いながらも彼女は鍵の掛かっていない扉を開けた。
 
部屋は真っ暗だった。
聞こえるのは水の流れる音だけで後は何の気配も無い。
だが確かに此処には彼の後を継いだ少女が居る筈だった。
サクヤは水が流れる浴室まで足を進める。
扉の隙間から光がはみ出ていたので、沙羅がこの部屋の中に居るのは確実だった。
 
「沙羅、入るわよ」
 
返答は無い。
機械音を上げて扉が開く。
サクヤを待っていたのは浴室の中は口を手で覆いたくなる程悲惨な光景だった。
割れた鏡に砕かれたタイル。
所々に飛び散った夥しい程の紅は恐らく沙羅のものだろう。
嵐が来て全てを引っ繰り返し返したかの様な光景のど真ん中に沙羅は座り込んでいた。
両手は血の赤で塗れ、全身ずぶ濡れのまま虚空を見つめている。
話し掛け辛い雰囲気だったがそうも言ってられずサクヤは彼女の肩を叩いた。
 
「沙羅、手当てしましょう。血が止まっていないわ」
「………サクヤ、さん?」
 
いつも通りの光の無い瞳がサクヤを捕らえるが、直ぐに逸らされる。
散らばった硝子の破片を早く片付けたかったが、彼女は沙羅が自力で立ち上がるまで何も動かさないよう努めた。
 
「あー、やっちまった。なるべく綺麗なままでリンドウさんに返したかったのに」
 
あっさりと立ち上がる沙羅にサクヤは目を丸くする。
今迄うつ向いていた少女はいったい誰なのか聞きたくなる位あっさりと、簡単に沙羅は立ち上がった。
 
「驚かせてごめんなさい。一人で片付けられるんで大丈夫ですよ」
「……そ、う?」
「はい」
 
あくまで淡々と沙羅は喋るがサクヤはそれが何よりも恐ろしく思えた。
 
 
 
 
 
 
壊れた少女
 
(彼女にとってそれが”普通”なんだとしても)











沙羅は壊れてるのが普通なんです
彼女に救いがあるのかは今はわかりません
彼女にとって"異常"が"普通"なので救われたいなんて米粒ほども思っていないから
この先どうなるかは私にもわかりません←
すべては彼女次第なんです

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