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日々の妄想を書き綴る
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白い雲が青い空を漂っている。
街に着いた途端、皆買い物に走ったり、思い思い自由時間を過ごしていた。
何処かに行く予定も何も無かったルークは公園のベンチに座りながら何とも無しに空を見上げている。

「口、開いてるぞ」
「ふぇ?」

条件反射で開いていたらしい口を閉じればカチンと歯が鳴った。
ルークの斜め後ろに立っていたアッシュは、前へと回るとルークの隣に座る。
自然な動作で座った青年に、呆然と見ているだけしか出来なかった少女は内心焦る。
出会った時の第一印象は最悪だった。
良く分からないけど自分の顔と良く似た青年が恐ろしかったを覚えている。
サラとジェイドの提案で、常にでは無いが頻繁に行動を共にするようになってから、アッシュに対して抱いていた印象が少し変わっていった。
彼は基本穏やかで無口だ。
だが、元々沸点が低い彼は、偶にストレスを発散するようにシンクやサラと喧嘩している事もあるが、それ以外は落ち着いている。
そして、アッシュは自分達と一緒に居ると時折酷く悲しそうな顔をするのだ。

「………あれ、そういえばアッシュってナタリアと一緒に居なかったけ?」
「ああ、さっきまでな」
「………どうして、此処に?」
「嫌か?」

いやいや、嫌じゃないけどさっ!!!

嫌じゃないけど意味が分からない。
彼が自分と一緒に居る理由が分からない。
自分の被験者。
ナタリアが、あの屋敷の皆が、求めていた、"彼"。

「そ、そう言えばサラは!?」
「眼鏡と一緒に居た。今後の話しでもしてるんじゃないのか」
「……アリエッタは?」
「シンクとヴェスペルと一緒に近くの森に行った。どうやらお友達が近くまで来ているらしい」
「…………ギンジ、さん、は?」
「お前のところのノエルと久し振りに茶でもしてくるって一目散に駆けて行ったぞ」

ギンジは妹思いだな、とサラが船内で言っていた事を思い出す。
確かにギンジは良い奴だ。
シンク達と同じ様に、一緒に居て不思議と気が抜ける相手だった。
そして偶に仕事を依頼する漆黒の翼の三人と、今自分の横に座っている少女も。
初めはどう接して良いのか分からなかったが、アリエッタのお陰で半ば済し崩すように彼女と会話する機会が増えたのだ。
今となってはありがたい。
彼女の傍は本当に心地が良かった。

「……本当に、」

不思議だった。
彼女と居るとずっと前から知ってるような錯覚に陥ることがある。
優しい光に、ずっと護られていた様な。

「ルー、ク」
「っ!?あ、アッシュ!!?」
「……良かったのか?」

首を傾げて問うアッシュに名前を呼ばれた事でパニックに陥ったルークが半ば叫ぶ様に何が、と聞き返す。
彼はその反応にも疑問を感じつつも、彼女の問いに答えるべく口を開いた。

「男の名だろう」
「……は?」
「"ルーク"は男の名だろう?」

女であるお前がこの名の儘で良いのか、と言われ、ルークは翡翠の瞳を大きく見開くと、困惑した様に瞬きを繰り返す。
今の問い掛けは、まるで自分を気遣うようにも取れる。
アッシュの名を奪ってしまったのに、ふざけるなでも返せでも無く、その名で良いのかと聞いてきたのだ。

嗚呼、何か今日のアッシュ始末に悪いよ。

ルークは赤くなった顔を隠すように俯くと、蚊の鳴く様な声で、良いよ、と言った。

「良いのか?」
「良い、これで、ううん、これが良い」

アッシュが赦してくれるなら、と言う少女の頭をアッシュは優しく撫でる。
肩口から零れ落ちた朱色の髪はユリアシティを出る直前に切った。
最初はバッサリと切るつもりだったらしいが、アリエッタに請われ、腰まであった髪を仕方無く肩甲骨の下辺りまで切るに留めたのだ。
二人を優しく包むように吹き抜けた風が朱色と紅を揺らして、過ぎる。
空を見つめていた視線をルークに向ければ、翡翠の瞳に涙が溜まって今にも零れ落ちそうだった。
頭に置いていた手を移動させて彼女を肩に触れれば、意図を理解したルークが戸惑いながらも自分に寄りかかってくる。
小さな嗚咽を上げて泣き始めた少女にアッシュは優しく、泣くな、と笑った。

「む、りぃ…ぅええ……」

だって、だって、こんなにも嬉しいのだから。
タルタロスの中でその存在を知り、雨の中廃工場で出逢い、ユリアシティで初めて話す事が出来た自分の被験者。
ずっと何かが足りないと思っていた。
それが何なのか分からなかった。
彼に出逢って、漸くそれが何なのか理解した。
きっと、自分は、求めていたのだ。
自分のたった一人の半身を。

「あっしゅぅ」
「情けない声出すな」
「だって、だって、俺、」

アクゼリュスは自然崩壊だったと言っていたけれど、自分はあの時ヴァンに付いて行ってしまった。
瘴気を消せると聞いて、そうすればアクゼリュスを救えるのだと思い込んで。
アクゼリュスが崩落してアリエッタ達が居なかったらと考えると恐ろしくて仕方が無い。
自分は知らないことが余りにも多すぎる。

「俺、もっと、頑張るから」

『俺は笑っていないといけないんだ』

「アッシュが、アッシュに、迷惑掛けない様に」

『笑って、頑張らないと』

「頑張るからっ、」

『そうしないと、』


テラレテシマウカラ――、


「――っ、」

鋭い痛みが頭に走り、上体をぐら付かせたアッシュをルークが驚きに目を見開いて支える。
どうしたのかと焦った声で問う少女の肩を掴んで引き寄せた。


大好きだよ
ずっとずっと大好きだから

だから、

アッシュは幸せになって


思い出せない。
でも、確かに憶えている。
顔も声も何も覚えていないけど、"彼"が自分を愛してくれたのは憶えているんだ。
ちゃんと、此処に、残っている。
嗚呼、それでも、


お前が居ないのに幸せになんかなれるわけが無いんだよ


「………いい、」
「え?」
「独りで、頑張らなくても、いい」

そう、独りで頑張る必要なんて無いのだ。

「分からないことは、教えてやるから、」

だから、


おねがいだからひとりでないたりしないでください
ひとりでいったり、しないでください

おれをひとりにしないでください


自分の肩に顔を埋めたアッシュの頭をルークの手があやす様に撫でた。
安心させる様に、自分は此処に居るとでも言うように、アッシュの頭を撫でて髪を梳く。
何度も何度も、心の中で大丈夫だよと告げるながら。
きっと今は言葉に出すより、想っている方が伝わるから。
やはり自分は彼のレプリカなのだと思う。
だって、彼の痛みも悲しみも孤独も、何も言われなくてもこうして感じ取れるのだから。

「アッシュ、」


――大好き


自然と湧き上がった想いに、ルークはまた涙を流した。









心が、魂が、ずっと君を呼んでいるんだ











ふぇっふぇっふぇ、リアル多忙すぎて中々更新できなくてごめんなさい

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