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日々の妄想を書き綴る
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そう、彼女は唯、






ユリアシティに着いた一同はティアの家へと移動した。
既にタルタロスの中で治療を終えたサラは先程の大怪我が嘘だったかの様な状態だった。
昔から怪我の治りが異様に早い彼女は、今回も治癒術を必要としなかったのだろう。
膝の上に座ったアリエッタの髪を櫛で整えながら、サラは口を開く。

「さて、何から話せば良いかな?」
「その前に仮面を取ってくれると嬉しいんですがねぇ」
「それは聞けないな」

喉の奥で笑う女性にジェイドも食えない笑みで応戦する。
不穏な空気にルークが焦った様に二人を見つめ、ヴェスペルは苦笑を隠せなかった。
呆れたシンクの一声で漸く収拾がついたのか、彼女は自分が何故ヴァンよりも先にセフィロトに居たのかを話し出す。

「私があのセフィロトに居たのはパッセージリングの書き換えをする為だった。その為にダアト式封咒を解除してあの部屋へと侵入した」
「ですが、ダアト式封咒は導師にしか解けない筈です」

言い難そうに発言するイオンにサラは一つ頷く。
確かにその通りだった。
その通りなのだが、サラはダアト式封咒を解く方法を知っていた。
知っていたと言うか、教えて貰ったのだ。

「誰にですか?」
「ユリア・ジュエの弟子だったフランシス・ダアト」
「ふざけた事を言わないで!!」

ガタンと椅子を倒し、勢い良く立ち上がったティアの気迫にナタリアとアニス、ルークは息を呑み、他の人間も信じられないとでも言う様にサラを見詰めていた。
想定内の反応だったのでサラは困った様に頭を掻くに留まったが、信じろという方が難しい話だと思う。
此処で全音素集合体達が都合良く現れて説明してくれたなら楽なのに。
それかせめてローレライだけでも声を届けてくれたらとは思ったが、第七音素が少ないこの土地ではそうもいかない。

ああ、面倒臭い。
やってられない。

早くもだらけて来たサラは自分を叱咤するように咳払いをすると再び説明を繰り返した。

「ティア・グランツの反応は正しい。俄かに信じられる話じゃないと私も思う。だが、私はユリア・ジュエが……いいや、彼女が生まれる前からこの世界で生きている」
「そんなっ、そんな事有り得ないわ!!」
「そう、有り得ない。……人間なら、な」

彼女の言葉にアッシュが目を見開く。
ガイもヴェスペルも驚いた様にサラを見ていた。

「私は人間では無い。今からはそれを前提に話をする。私は嘗て、第二音素の意識集合体であるノームの同位体であった女性から生まれた。いや、生まれたと言うよりも創られたと言うべきか。まだ神が居たとされた時代の話だ。その女性も今の人間に比べたら遥かに永い時を生きた人だった」

アリエッタを膝から降ろし、傍にあった水の入ったボトルを手に取る。

「世界には私の様な同位体が多々生まれた。それよりも昔は精霊達が普通に暮らせる世界であったそうだが、人間が生まれてから精霊達が世界に与えてきた恩恵は忘れ去られ、彼等は地上で生きる術を失った。誰にも見えず、誰にも自分達の声が届かないのを嘆いた彼等は人の胎に宿った子供に自分の音素を突き落とした。それによって属性が様々な同位体達が生まれたんだ。精霊……今で言う音素集合体達は同位体に自分達の声を聞いて貰い、人々へ救いの道を提示したんだ」

喉を潤す為にボトルを傾ける。
流れ込んで来る水がやけに甘いものに感じた。

「今ではもう、二人しか存在しないが」
「二人、ですか?」
「ああ、昔はもっと居たんだが、皆死んでしまった」

それを言う声音は淡々としたものであったが、仮面の下の表情は憂いを帯び、瞳は悲しげに揺れていた。

「……とまぁ、そんな訳で私は人間では無い。気の遠くなるような永い時間も生きたし、ユリア・ジュエ、フレイル・アルバート、ヴァルター・ジグムント、フランシス・ダアトとも面識がある。まぁ、皆故人だがな。友好的な交流は無かったが、取引的なものは結構あったかな」

記憶を辿る。
約2000年前の自分を探す。

「そう、譜術戦争の時とか」
「譜術戦争!?」
「アンタ、あれに参加していたのか!?」

口元に手を当て驚くナタリアと、驚きの余りサラに詰め寄るガイ。
その勢いに若干引きつつも、彼女は頷いた。
ティアは唯否定する様に首を振り、アニスは思わずジェイドを見るが彼は紅い目を細めてサラを見るばかり。
ルークは余り良く分かっていないのか首を傾げ、シンクとアッシュは沈黙を貫いていたがかなり動揺しているらしく、アリエッタがアッシュの膝に座っても二人とも気付いてないらしい。
と言うか素で乗せていた。
慣れというものは恐ろしい。
この中で唯一冷静で納得した表情で彼女の話しを聞いていたのは壁に凭れていたヴェスペルだけだった。

「参加、では無いかな?ユリアに護衛……傭兵を頼まれただけだ。戦火の中心で惑星預言を詠む為に」

今でも良く憶えている。
決して見つかる事の無い地に踏み込んできた少女。
自分を見つけたのはローレライの力があってこそだろうが、それでも静かだった生活を踏み躙られた恨みは消えはしない。
その恨みの対象は主にローレライだが。

「ユリア・ジュエとはさほど交流は無いが、彼女がダアトに裏切られた後にイスパニアとフランクが行った"外殻大地計画"の際にちょこっとフランシス・ダアトからダアト式封咒の解除方法を聞いたのさ」

流石に第二、第三段階の解除方法は聞かなかったけどね。

「………何で、ユリアは預言なんか詠んだんだ」

戸惑うようなアッシュの声にサラは小さく苦笑した。

ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディア
本名をメリル・オークランド

ガイ・セシル
本名をガイラルディア・ガラン・ガルディオス

ティア・グランツ
本名をメシュティアリカ・アウラ・フェンデ

そして『聖なる焔の光』であるルーク・フォン・ファブレ

預言によって人生を狂わされた人間達。
だが、サラはそれでも思う。
"今更"と。

「だから、言っただろう?譜術戦争を終わらせる為、」
「ですが、その預言によって人生を狂わされた人も居る筈ですわ」
「だとしても、大した理由では無いと思うよ」

そう、大した理由では無い。
あの時見た少女は人より少し第七音素の扱いに長けているだけの、何処にでも居る少女だったのだから。

「理由なんて、いつも後付さ。偶々詠んだ預言が、戦争終結に持っていくだけの内容だっただけだ」
「貴方っ、」
「君の先祖を悪く言おうとは思わないよ。だけど、私は私の言った言葉を間違いだとは思わない」

そう、彼女は唯、

「当時の彼女はローレライと契約し人知が及ばない程の力を持っていた。だけど彼女は子供だったよ」

唯、

「何処までも無垢で無知な女の子だったよ」

唯、大事なものを守りたかっただけなのだ。









そこに大義名分なんて無かった





そろそろオリジナル小説も書こうかな…

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