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日々の妄想を書き綴る
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赤毛が揃わないっっ!!!←









『いずれ逢えるわ、ヴェスペル。その時はあの子と仲良くしてね』

私達は家族なのだから






カタカタと震える少女の肩が痛ましかったが、自分には成す術が無く、ヴェスペルは漸く落ち着いてきたルークの隣に座っている事しか出来なかった。
廃工場で出会った鮮血のアッシュの顔を見てから彼女はずっとこの調子だ。

現在別行動を取っている他の者達は思い思いの場所に居るのだろう。
ガイが幼馴染である彼女を心配して部屋に残りたがったか心配のし過ぎはかえってされる側に多大な負荷を与えてしまうことがあるのでヴェスペルがやんわりと街へ買い出しに行くことを進めたのだ。

濡れた朱色の髪から雫が滴るのを見咎めて彼は浴室にあったバスタオルで優しく拭う。
視線を上げた少女に楽にしていろと視線で告げると髪を傷めないように丁寧に水分を取り除いていく。

「風邪を引けばガイが心配する」
「ごめん、ありがとう」

笑おうとする少女に首を振り、青年は苦笑する。
初めて彼女と出会ったのはチーグルの森でだった。
自分の目は昔から他の人間には映さないものを映し、耳は魔物、動物、植物等、あらゆる生命の"声"を聞き取ることが出来た。
その日もチーグルの森で住処を追われて住み着いていたライガ・クイーンと会話し、途中彼女の食料を調達する為に立ち去ったのだが、次に戻って来た時はクイーンの気配は無く、代わりに居たのは複数の人間と傷だらけの少女だった。
緑色の髪をした少年、イオンに問えばクイーンは少女が庇い、大人しく森を出て行ったらしい。
長髪の女性、ティアと共に傷を癒してから何故か成り行き上こうして行動を共にしている。
人生何があるか分からないとはこういう時に言うのだな、と感慨深くそう思った。

「なぁ、ヴェスペルって治癒術使えたけど、第七音譜術師なのか?」
「いや、俺の治癒術はまた勝手が違うんだ。俺の治癒術は第二音素を多く使っている」

俺にしか使えない術らしい、と言いながら大分乾いてきた朱色の髪に櫛を通す。
朱色から金へと変わりゆく色素は彼女の名前である焔を連想させた。

「自分でもよく分からないのか?」
「ああ、と言うよりも自分のことが一番分からない。記憶喪失なのかは知らないが、俺は自分の名すら知らなかったんだ」

梳き終わった朱金の髪を高い位置で結び、漸くヴェスペルは一息吐いた。
櫛を受け取ったルークが俺もやる、と彼の後ろに回り長い漆黒の髪に触れる。
自分とは違う色の髪を物珍しそうに見つめながら、慣れない手付きで髪を梳いていく。

「じゃあ、ヴェスペルの名前は誰に教えて貰ったんだ?」

"ヴェスペル・アショーカ・ノクティス"

初めて聞いた時不思議な名前だと思った。

「ルークは音素が一定以上集まると意識を持つって知ってるか?俺はその音素集合体を昔から目視出来るんだ。名前も含めて大概の事は彼等に教えて貰ったよ」
「何でその、音素集合体はヴェスペルの名前を知ってたんだ?もしかして、預言か?」

その言葉に部屋の中の空気がざわめいた。
恐らくシルフの所為だろうが、彼女の居る前で姿を現そうとは思わないらしい。

「アイツ等は預言が嫌いらしい。理由は知らないが、それだけは確かだ」
「そう、なんだ」

部屋の雰囲気がおかしい事に気が付いたのか、ルークもそれ以上追求してくることは無かった。
それから髪を結い上げようと奮闘する彼女に付き合って三十分間拘束されてしまったのは言うまでも無い。






やけに目が冴えてしまったヴェスペルは月明かりの中夜道を彷徨う。
街から出なければ問題無い筈だ。
彼は脳裏に浮かんだ旋律をそのまま唇の乗せて紡ぐ。


トゥエ レィ ズェ クロア リュオ トゥエ ズェ

クロア リュオ ズェ トゥエ リュオ レィ ネゥ リュオ ズェ

ヴァ レィ ズェ トゥエ ネゥ トゥエ リュオ トゥエ クロア


そう言えば、最初に口から出た旋律はダアトの軍人、ティアが紡いでいたそれだ。
何故自分がそれを知っているのかヴェスペルには分からない。
脳裏に浮かび上がる新しい旋律を声に出そうか悩んでいると、不意に音素が乱れる気配がし、彼は視線を前方に向けた。

『それ以上歌うんじゃねぇぞ』
『まさか、貴方が歌えるなんて思わなかったわ。流石ノームの子』
「ス……じゃねぇ、シャドウにシルフ……」

黒髪の少年は呆れた様に、シルフは純粋に驚いたように青年を見ていた。
言っている意味が分からない為首を傾げるしかないヴェスペルに少年は溜め息を吐いた。

『それは譜歌だ。聞いた事位はあるだろ?お前は俺達と交信出来るからまだしも、その効果は譜術と似た様なものだ。やたら滅多に歌うなよ』
『まぁ、ヴェスペルが歌う譜歌は譜術の発動と言うよりも私達を呼んでいる感じがしたけどね』

だから来たのよ、と笑うシルフはふわりと空中に浮かび上がる。
それを目で追いながら、彼は口を開いた。

「そう言えば、ノームの婆様や、サラマンダー達は?」
『……"此処"では"イフリート"だ。忘れたのか?他の奴等は皆"アイツ"の方に付きっ切りだ。子離れ出来てないとはこういう事だな』
『貴方だって似たようなものじゃない、シャドウ』

鈴の音のような声音でコロコロと笑う彼女に少年はうるせぇと悪態を吐く。

『いずれ逢えるわ、ヴェスペル。その時はあの子と仲良くしてね』

私達は家族なのだから。

楽しそうに声を弾ませる第三音素の意識集合体に、ヴェスペルは首を傾げる他無かった。









その存在が、これから大きく運命を揺さぶる事になるなんて












オリジナル設定どっさり。
ヴェスはルークのお兄ちゃんあたりになってくれたらなと思いながら書きました
性格はサラほど悪くは無いけど中身は結構真っ黒
大佐と普通にお話しできるんじゃないでしょうか??

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