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日々の妄想を書き綴る
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「思えばろくな人生じゃなかった」

ルークの手を握りながらアッシュは言う。
そんな彼をルークは辛そうに見つめるが、視線に気が付いたアッシュがお前の所為では無いと安心させるように微笑んだ。

「言い方が悪かったな。お前に出逢えた以外、ろくでもなかった。お前に出逢えた事が、生きてきた中で一番の幸福だった」

そう言って笑う自分と同じ顔の青年に、ルークは表情を緩めて同意を示した。

「俺もだよ。アッシュに出逢えて良かった。辛い事もあったけど、楽しい事もあった。俺の一生が、箱庭みたいな場所で終わらずに済んで良かった」

真っ直ぐな目でアッシュに語り掛けるのを邪魔しないように、頷いて先を促す。
ルークは少し早口になりながら、必死に言葉を紡いだ。

「だって、彼処から出られなかったら、アッシュには出逢えなかった。だからティアにも、俺を生み出したヴァン師匠にも感謝してるんだ。他のみんなにだって」
「ああ」

優しく肯定すると、息を詰まらせながら、でもね、とルークは言う。

「でも、それでも、辛かったなぁ」
「………」
「感謝してた。これは本当。俺の本心。でもそれ以上に怖かった。いつまた見捨てられてしまうのか、考えたら苦しくて、息が出来なかった。死んでくださいって言われた時、悲しかったけど、俺が死んで済むならって思った。なのに死なないでくれって言われて吃驚した。訳が分からなくて、どうして良いのか分からなくて、」

どれがみんなの望む"聖なる焔"か分からなくて、

「俺、ちゃんと出来たよな?罪も、少しだけでも償えたかな?」
「ああ、出来たさ。お前は良くやった」

穏やかなエメラルドの瞳が、水の幕が張られた翡翠の瞳を見つめる。
幾ら外見が青年のそれでも、精神はたったの七つの子供なのだ。
七歳の子供が世界の為にと奔走した。
いや、奔走させてしまった。
本来ならば自分が背負うべきものだったのに。
だが、今更何を言ったところで所詮は過ぎてしまったことにすぎない。
原因を突き詰めてしまえば行き着く答えは人間が存在している所為だ、と言った人物を思い出してアッシュは思わず笑った。

「アッシュ?」
「いや、アイツの事を思い出しただけだ」

あの頃の自分の、唯一の理解者だった女性。
嘗て同じ宿命を背負った哀しい人。
自分の、自分達の幸せを思って泣いてくれた唯一の人。
彼女は最後、死ぬなとも生きろとも言わなかった。
唯、幸せになってくれと笑いながら泣いていた。
"俺達"の幸せを願ってくれた。

「アイツはいつだって見守っていてくれた」

幾ら自分が間違いを犯しても、彼女は黙って傍に居てくれた。
ルークの"中"がどれ程傷付いているのかを知って自分の言動の愚かさを嫌悪した時も、慰めるわけでも責めるわけでも無く、唯安堵したような顔をして気付けて良かったと笑っていた。
彼女は自分を無駄に養護しない代わりに責める事も無い。
一見冷めているようにも感じられるが、世界中が自分の敵になったらどんな事をしてだって守ってやると言ってくれた。

だから安心して前へと進め。
本当に間違えてしまいそうな時は、ちゃんと教えてやるから。

「子供でいられなかった俺を、唯の子供として見てくれた」

それがどれ程自分を救ってくれたかなんて彼女は知らないのだろう。

「俺はきっと、アイツの事が好きだったんだと思う」

母として、姉として、友として、一人の人間として。
彼女は闇の中に居た自分を励ましてくれていた。

「………アイツに出逢えた事も、幸福の内の一つに入るのだろうな」
「……やっぱりそっくりだ」
「?」
「ヴェスペルも、そういう人だったんだ。ヴェスはアクゼリュスの時もミュウと一緒に俺を待っていてくれた。俺だけの所為じゃないって、俺を一人にしてしまった自分にも非があるって謝ってた。何かを間違った時も、俺と一緒に考えてくれた」

間違えるのは誰しも当たり前だと言って、同じ間違いを繰り返さないのが大切なんだと教えてくれた。

「きっとヴェスも、俺の事七歳の子供として見ていてくれたんだ」

卑下するわけでも無く、見下すわけでも無く、七歳であることが当たり前のように接してくれた。
唯一旅の仲間の中で背伸びすること無く、気を抜いて一緒に居ることが出来た人だった。

「ヴェスは、サラが居なくなって寂しいって言ってた」
「…………」
「漸くサラとの記憶を取り戻せたのに、サラは消えてしまった。独りは寂しいって、哀しそうに笑いながら言っていた」

やっと一緒に居られると思ったのに消えてしまった。
それでも、彼女が還ってくるのを待つと言っていた。

「俺正直、ヴェスが羨ましかった。サラが初めて俺達に顔を曝した時、ヴェスがサラとの記憶が抜け落ちているのが分かったんだ。でもサラは笑って思い出さなくても良いって言っていた」

思い出さなくても良いよ。
君にまた逢えただけで、それだけで私は報われた。
だからまた、初めましてから始めよう。

「その時気付いたんだ。俺きっと屋敷に居た頃、ナタリアや屋敷のみんなにそう言って貰いたかったんだって」
「ルーク、」
「今更だけどさ、そう思ったんだ」

生まれてきてくれて、また私と出逢ってくれてありがとう。

「生きているだけで良いって言ったサラの顔は凄く優しかったんだ」

まるで大切な宝物を見るように。

「アイツは昔から強かった。強く在ろうとしていた。それに、憧れた」

アッシュはルークの頭を慰めるように撫でながら、薄く笑う。
思えば昔から、彼女は自分の常識の斜め上を走っていた気がする。
出会った日も片手で軽く投げられた。
その後だって手合わせで勝ったことは一度も無かった。
アリエッタの"お友達"とも最初から何事も無く接し、シンクの卑屈な部分に全力でぶつかっていった。
他の六神将とだって、あのヴァンとだって彼女は分け隔て無く過ごしていた。

「アイツは他の音素集合体やローレライだって脅して絆して従わせるような無茶苦茶な女だぞ。そんなサラが幸せになれと言ったんだ」

これで幸せにならなかったら後が怖いぞ。

「……うん、そうだね。ヴェスもそれを願ってくれていた」

誰の為でも無い、俺達の幸せを。

「帰ろう、アッシュ。あの世界に」
「ああ、帰ろうルーク」









今度こそ二人で二人だけの幸せを












うちのオリキャラは自分のオリジナル小説(まだ書いていませんが)からです
なので少しわけが分からない所もあるかもしれませんが、
サラはお母さん気質というか気に入ったら放っておけないタイプで
ヴェスは何に対しても優しい子ですが人間嫌いです
後々詳細を書こうと思います

その内シンアリ逆行か、アッシュとサラ逆行をにょたルクでやりたい
アビス未プレイだけどやってみたいと思っています

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