日々の妄想を書き綴る
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
雨に濡れた髪が頬に張り付いて不快だった。
全身を叩く雨粒は痛いほど冷たく、着ている服は湿って重い。
冷え切った身体は背中だけ焼けるように熱い。
胴に回された腕は離される気配が無く、寒い所為か、震えていた。
腕の主は後ろから自分を放すまいと抱き締めて、肩に顔を埋めて泣いている。
微かに聞こえる謝罪の言葉にアッシュは言いようの無い苛立ちを感じたが、身体はそれに反してピクリとも動かなかった。
何でお前が泣くのか。
お前は何も悪くないのに。
身体が凍えて思考すらうまく働かない。
苛立つ感情さえ寒さで鎮まってしまった。
吐き出した息が白いとどこか遠くで考えながら彼は自分を逃がそうとしない腕に触れる。
寒さに震える剥き出しの腕は青白く見え、酷く痛々しく視界に入り込んだ。
ゆるりと腕を撫でれば力が抜け、肩に埋めていた顔を上げる。
恐らく自分よりも明るい翠の瞳は不安で揺れてるのだろう。
理由は分からないが彼が、ルークが不安がっているのがアッシュには感じられた。
大体、急に後ろから抱きついてくる時点で様子がおかしいのは明白だ。
こんなにも精神が不安定になっているのに彼の仲間はそれに気付かなかったのかと不審に思う。
くるりと身体を反転し、ルークと向き合えば、やはり翠の瞳は心許無さそうに揺れていた。
まるで迷子の目だと思いながらその身体を今度は自分から抱き締めた。
力が入り強張る肢体が何故か哀しく感じられて、彼はあやすようにその背を撫でる。
合わさった鼓動が心地良くてアッシュは瞳を閉じた。
雨はまだ降り続き、二人を強く叩く。
だが、聞こえる音が互いの吐息だけだったから、地を叩く雨音はさほど気にならなかった。
背へと回された腕が縋る様に自分と同じ大きさの背を抱き返す。
「あっしゅ、」
「……」
「アッシュ、あっしゅ、さびしい」
たどたどしい口調で紡がれた言葉に、ルークを抱く腕に更に力を込めた。
隙間が無くなる程抱き締めても寂しさは埋まらない。
口には出さなくても心がそう泣いている。
「さびしい、さびしいよぉ」
ああ、そうだな。
おれもさびしいよ。
声には出さずにそう思えば、慰めるように背を撫でられる。
自分達の間には言葉は要らないのかもしれないとアッシュはどこか嬉しく思った。
言葉よりも確実な想いを共有出来るなら、それはそれで良いのだろう。
それでもルークは自分の想いを言の葉に乗せる。
彼の声はシルフを震わせて自分の耳に届くのだ。
鼓膜を震わせるその音はこの世のどんな音よりも美しいと感じる。
「さびしい、こわい、あっしゅ、ひとりは、いやだ」
「独りじゃない、俺が居る」
「うそ、うそ、あっしゅはいつもさきにいく」
駄々を捏ねる様に首を振る反動で朱色の髪から水滴が散る。
落ち着かせるように再度背中を撫でて、彼は極力穏やかな声音で話し出した。
「ルーク、俺達はいつも繋がっている。お前もそれは感じているだろう?」
「わかる、けどっ!」
「なら、俺と一緒に来るか?」
抱き締めた身体が大袈裟に震える。
それに苦笑してアッシュは一旦身体を離した。
困惑した様子のルークに彼は表情を緩める。
「もう、我慢しなくても良い。俺も、もう我慢したくない」
「あっしゅ、」
「前言撤回だ。繋がっていると言っても、やはりこうしている方が良い」
目の前に、手を伸ばせばいつでも触れられる距離に居たい。
「おれも、いたいいっしょに」
だって元々は"一つ"だったんだから。
本当はいつだって傍に居たかった。
ずっとずっと、傍に帰りたかった。
「もうはなれない、はなれたくないよ」
「ああ、ずっと一緒だ」
寂しがりや二人
ずっと一緒
死ぬまで一緒
死んでも一緒 雨って切なくなりますよね この二人には出逢ったとき同様 雨が似合うと思うのです イメージ的にはレムの塔後
PR
Comment
カレンダー
03 | 2025/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 |
フリーエリア
最新トラックバック
プロフィール
HN:
朱羽
性別:
非公開
ブログ内検索
P R
カウンター