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日々の妄想を書き綴る
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夕焼けが大地を照らす。
辺りを見渡しても廃れた建物だけでソーマは此処が何処だかもいつ自分が此処に来たのかもどのようにして辿り着いたのかも全く覚えていなかった。
此処に居る事以外の記憶がぽっかりと抜けてしまったような気分だった。
急にカンカンカン、と金属を打つような音が鼓膜を震わせる。
何だと思って目の前を見つめればいつの間に現れたのか線路の様なものが地面を走っていた。
黄色と黒のコントラストで色付けられた長い棒が行く手を阻むように降りてくる。
 
カンカンカンカンカンカン
 
警告音の様に鳴り響くそれは頭の中で響いているようにも感じた。
ふと線路の向こう側に人影が見えた気がして目を凝らしてみる。
逆光によって顔が分からないが、相手は確かに真っ直ぐ此方を見ていた。

カンカンカンカンカンカン

向こう側に居る相手が不意に手を差し出してきた。

まるで此方に渡って来いとでも言う様に。

カンカンカンカンカンカン

太陽の光が雲によって遮られた。
相手の顔がゆっくりと露わになる。

カンカンカンカンカンカン

相手青いフードの中に在ったのは其処には自分と寸分変わりの無い顔だった。
息を呑むソーマに同じ顔をした相手は薄く笑むと再度その手を此方に差し出す。

カンカンカンカンカンカン

不思議と身体が動いた細長い黄色と黒の棒を乗り越えようと足を踏み出す。
遠くから地鳴りの様なノイズが聞こえるがそれを気にすることなく彼は道を遮る棒に手を掛けた。






「ソーマ!!!」
「っ!!?」

目を開いたら深緑の瞳が心配気に自分を見詰めている。
此処は何処かと見渡せば見慣れたバスルームだった。
どうやら自分は眠りこけてしまったらしい。
すっかり冷えたお湯は本来の役目を果たさずに自分の身体を冷やすばかり。
寒さに震えていれば、リンドウが凍えた身体を抱きあげバスタオルで包む。
そうされて初めてソーマは今の自分の恰好に気付き自分を抱えるリンドウの横っ面を思いっきりぶん殴った。

シーツに包まって顔を出さないソーマを待ちつつ手加減なしで叩かれた頬を保冷剤で冷やす。
今回ばかりは自分に非が無いとはっきり言えるリンドウは理不尽な仕打ちに溜め息を吐いた。
風呂に入ったきり出てこないソーマを心配してバスルームを覗いてみれば熟睡しているので焦って起こしたのだ。
その結果がこれだ。
驚いたのもあるのだろうが今回ばかりはあまりの理不尽さに少し泣きたくなった。
まぁ、それも今に始まった事ではないが。
 
「ソーマぁ、いい加減出てこい。怒って無いから」

もそりと動くシーツに苦笑を零す。
昔から気まずかったりすると何処かに隠れる癖のあるソーマはシーツの中から顔を覗かせると困った様にリンドウを見た。
安心させるように銀糸の髪を掻き混ぜれば漸くシーツの中から出てくる。

「……変な夢を見た」

事細かに内容を話せば彼は苦笑してもう一度ソーマの頭を撫でた。

「どうせ夢だろ?だけど、渡らなくて良かったんじゃないのか」
「?」
「渡ってたら、死んでたかもしれないしな」





 
踏切の向こう
 
(待つのは誰?)









不可解

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